ISBN:4087831035 単行本 渋沢 幸子 集英社 1998/04 ¥1,680

 「寵妃ロクセラーナ」読了。
 トルコのオスマン朝を舞台にした小説は希少。
 この小説を読めば、いかに魅力的な人物がいたか分かります。
 ロクセラーナことハセキ・フッレムはオスマン朝を最盛期に導いた皇帝シュレイマン1世が最も愛した女性。
 自分の息子を帝位につけるために、大宰相イブラヒム・パシャと第一皇子ムスタファを殺し……と、悪女の代名詞のようにも言われますが、オスマン・トルコには恐るべき掟が定められていました。
 ”皇帝が死んだら皇位継承者以外の皇子は即刻殺害すること”
 息子の命を守るためには、皇帝にするしか道はないのです。
 皇位継承争いを避けるためにはムスタファ以外の皇子を早々に殺すべきだったのかもしれません。
 英明で偉大な皇帝と称えれられるシュレイマン1世でさえ、その決断は下せませんでした。
 その脆い人間性もまた魅力ではあるのですが……。
 殺伐とした人間関係のなか、シュレイマン1世とイブラヒム・パシャ、ムスタファ皇子とバヤジッド皇子の関係は哀しくも素敵だな、と思います。

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